今週のお題「心に残った本」
小さい頃は漫画すら読まず、中学生になってからは漫画以外見ず・・・
そんな状態だった小生が本を読みだしたのは、19歳の浪人生時代からであった。
きっかけは、国語の点数をあげるための訓練だった。
そして、一番最初に読んだのが、ヘミングウェイの「老人と海」。
本が好きだった兄の部屋の書籍の中で、いちばん薄い本で、かつ有名な著者だったのが選定の理由だあった。
この時生まれて初めて、映像をこえる小説の面白さにふれた。
それからは、本屋や図書館で「本との出会い」を探し続けている。
さて、そんな小生の心に残った本であるが、それは山崎豊子の「沈まぬ太陽」である。
通勤電車の中で、何度も涙を拭うことになった忘れられない大作である。
本編の幹となる「日航ジャンボ墜落事故」は、当時中学生だった私にとって衝撃的な事故であり、今でもヘリコプターで救出された女の子の姿が脳裏に焼き付いている。
事故から20年以上が経ち、日々の生活の中でこの事故を忘れてしまっている私の前に、ある日、突如としてこの本が本屋で私を手招いたのであった。
「沈まぬ太陽」の冒頭、主人公の恩地元は、アフリカの辺境での勤務を強いられていた。仕事は特になく、いわゆる左遷状態。労働組合の幹部として「やりすぎた」英雄は、国民航空の飼い殺し社員となっていた。
このリードから事故の発生、遺族との交渉、政治、社内での対立など、息をするのが苦しくなるぐらいのスピードで話が展開していく「沈まぬ太陽」は、当時、サラリーマン生活10年を超えた小生にとって、あまりにもリアリティーがあり、あまりにも衝撃的であり、そして学ぶべきものが沢山あった作品であった。
本文中、突如として事故にあわれた落合さんのインタビューが載っていたり、事故の様子が克明に再現されていたり・・・作品に書かれている内容ですら、このブログに書きづらい内容が、この本には載っている。山崎氏曰く、ただの小説としてでなく、事実を後世に伝えるための作品にしたかった。彼女の目的は、完璧に果たせていると思う。少なくとも、小生はこの本により、中学生時代に見た事故の映像を思い出すだけでなく、当時知らなかった事実を作品を通じて知ることができた。そして、この作品に対する様々な憶測や批判も同時に知ることができ、かつそれらを知ったうえでも、この作品の重要さと素晴らしさ、存在意義の大きさを感じるに至っている。
ちなみに、本は全3編、5巻にわかれているが、およそ1カ月で読破してしまった。
※ただ、読破最短記録だけで言うと、めぞん一刻全15巻を1日(朝から翌日の朝まで)というのがあるが・・・
この作品に出会うまでは、堺屋太一の「秀長」が一番好きな作品だった。
しかし、「沈まぬ太陽」は、明らかにスケールが違う、違いすぎた作品だった。
この作品を読んだ数年後に映画化されたが、私はまだ観ていない。2部構成の規格外大型作品と聞いているが、この作品を映像化するには、「山河燃ゆ(二つの祖国)」と同じく、大河ドラマで一年間かけてすべきだろう。「白い巨塔」もフジテレビでシリーズ化したが、やはりそれでも時間が足りない。
日航が絡むだけに、実現不可能だとは思うが、是非、大河にしてほしい。
後世に伝えるべき話が、沢山詰まっているから。
事故のこと、事故処理の事、遺族や被害者の事、組織内の軋轢と矛盾・理不尽な事、政治の事・・・・・・
これらは、いつの時代にも起こりうる話で、永遠に我々社会の中に起こりうるストレスである。
おそらく、福島原発も、日航事故と同じような話があるだろう。補償の問題、作業被害者の救済、責任追及、政治的責任・・・・
日航事故の経緯をみれば、これから起こりそうな事を知ることができる。
JR福知山事故の時、遺族補償対応について、JR西日本は日航の当時の事故対応者に相談したそうだ。“遺族とは個別に協議した方がいい”と言われたとか。
ちなみに、彼女の最新作「運命の人」は、沖縄返還をめぐって起きた「西山事件」が舞台。法律の勉強をしたことのある人なら知っている有名な事件であるが、私はこの作品を通じて、当時のことを知ることができた。
小説は、人間の生きざまを映し出す投影機だと思う。誰の作品も同じ。これからも素敵な本に出会い、色々と学んでいきたいと思う。
最後に、人間関係で悩んでいる人にお勧めの本は、次の本である。
本を通じて作者に怒られているような気もするが、それが返って良い。
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