ともほ じゃーなる

まいにち の ものがたり

(日経読み)カスハラ対策について

クレーム

8月15日の日経夕刊に、「カスハラ、対策急務も客保護は」という記事があった。

私の記憶では、40年ほど前の日本社会では、小売業の従業員は、今ほど客にマウントを取られるような状況ではなかったように記憶している。

それこそ、ややこしい客は、普通に出入り禁止にしていたし、警察もすぐ呼んでいたように思う。

それがいつの間にか、客が何よりも正しいという風潮になってしまった。

その契機は、リーマンショックによる不況だったのではないかと。

株価暴落の日に、街角の株価を映す電光掲示板を見てショックを受ける投資家の姿

90年代半ば以降に生じたバブル崩壊で、日本人は自信をなくし、それまでの意味のない富を求める嗜好から、コスパ重視に変わっていった。

ここです。そう、消費者が生産者や小売業者より力を持ってしまった。それも過度に。

しかし、安かろう悪かろうという商売は、バブルで高品質の商品を経験した消費者には通用しなかった。ここからデフレが始まったわけである。

その後、投資バブルが始まる。村上ファンドホリエモンが時の人となる時代である。一方、霞ヶ関で年越し村が出没するなど、格差社会も同時に始まるのである。

そしてリーマンショックで投資ブームも終わるわけだ。

少しして、アメリカ発のITバブル、DX投資ブームが始まり、数年後にITバブルが弾けてしまう。

日本ではその後、小泉劇場がありーの、3.11災害と原発事故がありーの、色々あった。

さて、バブル以降、一貫して変わっていないのが、消費者強者の流れ。

買い物をする高齢女性

カスハラも、最近の言葉ではあるが、昔からクレーマーとか、ブラックリストとか、いろんな呼び方でヤバイ消費者は呼ばれていたので、今更ハラスメントで括るのかよーと思う。

最近、特に見かけるハラスメントは、高齢者によるもの。

しかも、タチが悪いのが、バブル時代に地位と名誉をえた人で、人に頭を下げる習慣がない人か、人に頭を下げすぎて社会に不満を抱えて年配者になった人か、大体どちらかのタイプのような気がする。たまに、他人のハラスメントへの乗っかり型のハラスメントもある。

男女が日本経済新聞を読んでいる

さて、このカスハラについて、日経夕刊では、労働組合代表のUAゼンセンの執行委員長と全国生協の事務局長が誌面対談している。

UAゼンセンを知らない人もいると思うが、この組合は、元々はゼンセン同盟という繊維組合が中心になって結成された組合で、私が東京の人材派遣某企業に就職した時、ゼンセン組合が会社の組合だった。繊維でもないのになぜ?そう思うだろうが、要は派遣、小売、化学、薬局など鉄鋼の集まりである基幹労連とか、芳野会長出身母体のJAMのような重工機械の集まりの組合と違って、様々な企業で働くが入っている組合である。そしてその多くが、女性なのである。

カスハラは、今や暴力、脅迫、不当要求など、犯罪行為になるものも珍しくない。

実行者も若い人からお年寄りまでと、様々。

年配者にカスハラが多いというのは、数字上も確かなようだが、やはり自制心が低くなるのか、大声で何度も同じことを主張し、人の話を聞かない、そういう年配者特有の習性的行動が、それを見聞きする人に印象強く残ることも、そのように言われる原因ではないかと思ったりする。

今回の記事では、双方の立場からの主張が見られるので、ぜひ読んでいただきたいと思う。

www.nikkei.com

ただ、今の世の中、カスハラという言葉もあるが、「客>小売」という客本位制の幻想に取り憑かれた人が、結構多いことも問題を大きくしている。

私の身近でも、つい最近あった。

母が注文したTV通販の商品が、約束の日までに届かないと、母が電話でオペレーターに怒りまくり、主張が通らないと部長を出せと喚き出した。

よく聞くと、⚪︎日までに必ずお届けするとTVで言ったと母は主張するが、TVのナビゲーターは、お盆までにお届けするとしか言っていない。

お盆とは、具体的な日ではない。

ただ母は、お盆までなのだから、12日までには届くはずだと思っているようで、電話では約束と違うと怒りまくっていた。

結局、その企業さんは、12日の午後に届けてくれたのだが、母の怒りは収まらない。

さて、この場合、誰が悪い?

まあ、どっちもどっち。お盆までと曖昧な表現で消費者の気持ちを掻き立てたTVにも問題あるが、電話で怒りをぶつけた母も、乱暴な口調でオペレーターを脅していたし、やりすぎだし、そもそも注文の時に、⚪︎日までに届くか?の確認をしていなかったのだから、過失は十分あるわけである。

さて、この母。常日頃から、こういうトラブルが多い。若い頃から、自分の主張を通すことが、自分を守り、自分を幸せにするのだと思っているようで。

激しい競争社会を勝ち抜いた年配女性

これは団塊の世代の特徴。

こういう年代が、一番迷惑なレベルのハラスメントを起こす。

なぜか。自分の主張は、ハラスメントではなく、正しい要求だと、自分の行為は正当だと。

それは競争激化社会で得た教訓だからである。

そして何よりも強いのは、お金であり、お金を持つ消費者が何よりも成功者であり強者であると。

お金がなくなれば、手のひらを返して強いものへ頭を下げる。そんなの当たり前だと。

これです、これ。

この世代が、後期高齢者になってきている。

お金を払っている私のいうことは、絶対だという思い込みが、歳を重ねるごとに強くなってきているように感じる。

逆に、お金が絶対だからこそ、振込詐欺などの特殊詐欺にも遭いやすいのだろう。

80歳以上が多くいる介護現場では、ハラスメントが激しくなっていて、ハラスメントを理由に離職する介護従事者が多くなっている。

誌面対談されている方は、それぞれの立場で主張されているが、介護現場、医療現場の声は届いていない。

それはなぜか。

介護も医療も、双方とも、無償の愛こそが正義という教育を受けているプロの集まりであり、そういうことを主張しにくい業界だっただからだ。

なので、カスハラ相談窓口だって、まともに整備されていない。

内部告発用の相談窓口はあるのに。

これを早く訂正しないと、働いている人たちが壊れてしまう。

状況は深刻なのだ。

私たちができることは、なんだろうか。。。考えさせられる。