ともほ じゃーなる

まいにち の ものがたり

硯の話

小学校にはいると、誰もが手や顔を真っ黒にしながら学ぶ習字。
小生も例に違わず、小学生低学年から卒業までの間、お習字を学んでいました。
その効果はというと・・・いやー、駄目ですね。すっかり普通の乱れ字しか書けなくなってしまいました(;一_一)
さて習字というと、必ず使うのが筆、墨、硯に半紙、そして文鎮です。
これら道具は平安の時代から、美術工芸品としても多くの方に愛されています。
そして、なにより書道を志す方のあこがれ、それは硯です。
 
先日、京都を散策した際、平安神宮の近くにある京都市美術博物館の敷地内でフリーマーケットを発見しました。

多くの露店の中、「700年の伝統の技、京硯」という看板を発見した小生。
ちょっと興味を持ったので、その店を訪ねました。

露店の奥から、60代と思しき男性が声をかけてきました。
「あんた、硯に興味あるんかね」
家内が習いごとでやっているからと言いながら、露店の硯に目を向けた小生。その硯の美しさにびっくりしてしまいました。
店内の男性はこの作者だろうと思い色々話をきくが、どうも話が噛みあわない。
そして判明したのは、作者はこの男性の息子さん。しかも30歳の若さだという。
「こんなに若いのに、すごい仕事していますよね」と小生。なんでも鑑定団のような目利き能力もないのに、なんとエラそうな発言をしたのかと後ほど反省するのだが、この硯、素人目からでも美しい。

「息子がこの職人を目指していて、今、山梨県の雨畑で「望月知石師」のもと修行を積んでいるんです」
なかなか生活の糧にならないのだと、芸術家を持つ息子さんの父親らしく心配げな顔をのぞかせた店主。

硯の作者の名は、林京石(職人名だとおもわれる)さん。
京都長岡京で生まれ、現在は山梨県で修行中の身。京都で唯一の硯職人ということでした。
硯の原石は、雨畑真石という高級素材。
硯の上で墨を滑らせると、なめらかに細かい粒子が墨汁となっていく・・・小生、墨を磨らせてもらっていないけど、硯の何とも言えない深い黒光りをみると、その感触が容易に想像できました。
値段も手ごろでしたので、是非、嫁さんが昇段したときにはプレゼントしてあげようかなと思っています。

【京硯 林京石さんの連絡先】
〒617−0823
京都市長岡京市長岡2丁目15−8
京硯職人 林京石
電話075(954)1164
※工房での販売しているとのことです。