ともほ じゃーなる

まいにち の ものがたり

昔、昔、こんなエッセイを書いていたみたいですw

昔、某出版社が募集していたエッセイコーナーへ「夕桜」というタイトルで応募したことがあります。
それは、数多くの作品とともに冊子となり、書店に並んだようです(本が会社から送られてきて、同封のハガキにそうかいてありました)。
内容は、若かりし私が転勤する直前に体験した、ちょっとしたLoveストーリーです。
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タイトル「夕桜」
3月31日。
その日は転勤前に仕事をかたずけてしまおうと、休日出勤してた。

仕事が終わり、さあ帰ろうかと部屋を出かかったとき、同じく転勤し職場を後にする同僚の女性から、「駅まで一緒に帰らない?」と声をかけられた。
30歳をすぎ、彼女の事をそれほど女性として意識していなかったはずなのに、声をかけられた瞬間、卒業式を終え、校門に差し掛かった時に後輩の女学生から声をかけられる高校三年生のような気分になった。
騒がしい職場を抜け、ビルの外に出ると、少し肌寒い風が頬をかすめた。雲一つない空は、いつの間にか薄いオレンジ色に変わり始めていた。
二人を照らす夕陽を正面に、最後の退社を惜しむかのように、同僚の女性と最寄りの駅までゆっくり歩いていった。
一緒に仕事をした3年間の昔話に華は咲いたけど、なぜか寂しさが募る。不思議な気分に満たされた二人。
駅前の公園に差し掛かった時、夕陽にてらされた満開の桜が二人を包むように出迎えた。
あまりの美しさに、二人は言葉を失ったまま・・・。
夕陽に照らされ輝く桜吹雪が、彼女の後ろから肩をかすめ、私の目の前を、彼女の香りとともに通りすぎていく。
その瞬間、涙目の彼女は、「楽しかったね」と一言。そしてお別れの時。
彼女が右手を差し出し、私も手をだそうとしたとき、彼女の右手の中に手紙を見つけた。
「何年ぶりだろう、女性から手紙を貰うのって」
そんなことを思いながら、手紙を受け取った私は、絶対渡せないと確信していたはずの彼女への3年間のお礼の手紙をカバンから慌てて取り出し、汗ばむ手から華奢な彼女の手に渡した。
そんな二人を見守るように、夕桜の花吹雪が、いつまでもいつまでも包んでいた。

こんな内容だったと思います。これを書いた30代の私は、まだ若かったんだろうな。この話は、少しだけ実話が入っているんです。
ちなみに、手紙をくれた彼女のモデルとなった実在の女性は、今や大学生の娘をもつ母親。月日が流れるのは、早いですね。